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国会で総理の答えていない疑問点をまとめてみる

安倍政権を巡る議論

情報公開の重要性

私は一貫して申し上げているのは、

疑惑を晴らす義務は政府にある。政府は情報公開をしなければいけない。政府が説明しないなら、疑惑は真実であるとみなすべきだ。

ということである。シンプルに言えばこれだけだ。

行政府が適切に情報交換しない限り、野党に問題を立証することは出来ない。なぜなら全ての証拠は政府の内側にあるからである。

 

だから、情報公開をしない疑惑に関しては、一貫して行政府に立証責任を求め続けるし、立証責任を果たさない限りは、その疑惑が真実であると考えざるを得ない。

ドリルで証拠を壊せば、証拠がないから政治的責任を取らなくていい。そんな馬鹿な話があって良いわけがない(実際あったわけだが)。

 

外交文書や防衛に関する情報であればもちろん一定の配慮が必要だが、国有地の売買を黒塗りにしたりする必要性はまったくないのだから、情報の透明性が担保されていないなら、それは「クロ」ということなのだ。

 

政府に用いられるべきではない「推定無罪」

「推定無罪」は、立場の弱い被告人を国家から守るための原則であり、政府はそうではなく、徹底的に疑惑を晴らす義務を負っている。

 

政府の疑惑を追求しようとすると「証拠がない」という人がいる。しかし、そもそも政府が適切に情報公開しない限り、真偽を明らかにすることは出来ないのだ。

だから、政府による情報公開と徹底した追求が果たされない限り、森友学園問題も加計学園問題も「疑惑が真実である」と考える他無い。

 

政府が果たしていない説明責任

権力と説明責任はセットである。少なくとも民主主義国家においては、説明と情報公開を前提に我々は政府に権力を委託しているのだ。

 「必要ないのが理由だ」とか「勝手に言っていることに答えない」とか、そんな不誠実な答弁はありえないのだ。

 

選挙と民主主義

また、疑惑の追及は選挙とは切り分けて考えるべきだ。

自民党支持であろうが公明党支持者であろうが、行政府がおかしな法案を出したり、癒着や汚職がある時は、監視機能を果たさなくてはならない。

 

何かの疑惑がある時に「でも民主党政権では…」といちいち持ち出す総理は、民主主義の前提を理解されていないのではないか。

 

国会は法案や予算案を審議する場であり、予算が適切に執行されているか、あるいはその法案が本当に必要なのかを議論する場なのだ。

民主主義は、選挙で代表者を選んで後は全権委任をする、ものではなく、我々の「不断の努力」で実現するものであるはずだ。 

共謀罪に関して

金田大臣の資質は適切なのか?

 金田大臣の資質は、本当に大臣として適切なのだろうか?

「私の頭脳の問題で対応出来ない」といい、前例を無視した刑事局長の招致に始まり、金田大臣がまともに問題を理解しているとはいいがたい。

 

著作権法の予備罪とは何なのか?

共謀罪法案に関しては、もはや法案と呼ぶのすら厳しいほど様々におかしな点があるが、一点上げるとすればこの点だ。

 民進党の枝野幸男氏は、共謀罪の対象犯罪に著作権法違反(著作権侵害)が含まれていることを疑問視。

日本音楽著作権協会(JASRAC)がピアノ教室などの演奏に著作権料を課そうとしている問題に触れ、音楽教室の人たちが「組織的犯罪集団」に当てはまりかねないと指摘した。

そもそも、著作権法違反は親告罪であり、親告罪の事前準備行為とは何であろうか。具体的被害がない段階で、著作権法違反を犯すための準備行為とは何なのか、適切な答弁がなされていない。

そもそも、著作権法を共謀罪に入れる理由は何なのか?このようになぜ逮捕要件になっているのか理解しがたい罪状が極めて多いのが共謀罪だ。

 

一般人は逮捕されないのか?

金田法相は「一般人は対象にならない」と度々述べているが、そもそも捜査とは一般人を疑って、犯罪を犯したかどうかを調べるものである。 そう考えれば、一般人が対象にならない、というのがいかに茶番であるかは理解できるだろう。

共謀罪は、実行の前段階で逮捕権限を与える罪であり、このような不誠実な答弁は、今後の司法のあり方にも疑念を抱かせる。

 

そもそも、これら全ての問題は、「警察は決して間違った逮捕はしない」という万能主義によって立っている。警察は当然間違えることもあるし、冤罪も存在する。

しかし、現実的に、日本では逮捕されればほとんど有罪、逮捕状請求もそもそも殆どが許可されている。

このような現状でさらに警察の権限を拡大することが、いかなる悲劇をもたらすのか、我々は正確に見極める必要がある。 

 

森友学園問題

財務省は適切な調査をしたのか?

①有益費の算出の際に、廃材や生活ゴミを撤去対象にしなかったのはなぜか。その判断に至った関係者とのやり取り記録と、役所内の決裁文書
②8億円の値引き額算出の際には、一転して廃材や生活ゴミを撤去費用の対象に含めることにしたのはなぜか。その判断に至った関係者とのやり取り記録と、役所内の決裁文書

情報を開示しなければ、財務省や国土交通省に対する疑惑は益々膨らむことなる。
もはや「廃棄したからありません」では済まされない。削除した電子データの復元の可能性を財務省が認めたとの報道もある。残っている関連資料をすべて開示にすべきだ。

経産相の総理夫人付き補佐官は、本当に個人で FAX を送ったのか?


首相夫人付きの経産相の職員が、籠池理事長に対して「昭恵夫人には報告しています」と述べたFAXが発見されている。

これに対して、政権側は一貫して「職員個人の判断で行った」と述べている。しかし、夫人付きの職員、しかもいわゆるノンキャリアの職員が個人の判断で行うなどということがありうるのだろうか?

 

ここから浮かび上がるのは、自称「私人」である夫人が、かなりの強い権限を省庁に対して持っていたのではないか?という疑惑である。

これは国家のガバナンスとして適切なことであろうか?

 

加計学園問題

加計学園については再三述べているため、ここではあえて一個だけに絞る。

なぜ京都産業大学が落ちたのか?

広島・今治は「観光・教育・創業などの国際交流・ビッグデータ活用特区」である。獣医学部とは何も関係がない。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/dai18/shiryou2-1.pdf

そもそも、「一校だけ」、しかも四国という限られた地域に付与するとなれば、以前から何度も申請してきた加計学園くらいしか申請できないというのは予期できるだろう。

そうすると、これは特区というより特定の学校法人に対する利益供与でないか、とすら疑われる。 

そもそも、安倍総理は利害関係者ではないのか?

 通常、民主主義国家であれば、総理大臣の利害関係者に対して、慎重になるべきだと考えられる。しかし、安倍内閣は全くこの点について無頓着な印象を受ける。

稲田防衛相 夫名義で軍需株/5社で計2万2000株/初入閣後に取得か

今村復興相 東電株8000株保有/本紙指摘で「報告書」訂正/問われる閣僚の適格性

 

例え何ら関係のない友人であれ、利害関係者に対してはあえて自制するというのが権力者に求められる自己抑制である。

自衛隊の日報問題

なぜ、統合幕僚監部は、電子データの存在を確認してから1か月間も、大臣に報告しなかったのでしょうか。

▽どの部分を黒塗りにして公表するかの調整に時間がかかったこと、

▽年末年始の休暇をはさんでいたことを理由にしているようですが、

大臣への説明の準備に1か月もかかったというのは、いくらなんでも遅すぎる印象を受けます。

 

2016年10月に情報公開請求があり、防衛省は12月に入って、日報は破棄されていたとして、開示をしなかった。
しかし、実際には破棄されておらず、組織的な隠ぺいの疑いがあるとして、現在、防衛省で調査が行われている。

戦闘ではなかったのか?

そもそも、この問題は、日報に「戦闘」と書かれていたことから、その文言を隠蔽するために廃棄したのではないか?という疑惑が持たれた事件である。

南スーダンで何が起こったのかを知ることは、憲法など日本の防衛のあり方を国民が議論し、考えるために欠かざる重要な情報だ。それが国民の目から隠されていたとすれば、背筋の凍る話である。

 

本当に、「隠ぺい」していないのか?

日報問題に関しては、そもそも疑問点の他無い。なぜこのような重要書類が廃棄されたのか。防衛大臣が知っていたなら当然問題であるし、知らないうちに廃棄されていたのであれば更に問題である。

日本のガバナンスやシビリアンコントロールを脅かす極めて重要な問題だ。

刑法の性犯罪等改正案

なぜ「先入れ先出し」ではないのか? 

もう一点、刑法改正について述べておく。

 改正案は、強姦(強制性交等)罪や強制わいせつ罪などについて被害者の告訴がなくても加害者を起訴できる「非親告罪」化する。また、強姦罪と強姦致死傷罪の法定刑の下限を懲役5年と懲役6年にそれぞれ引き上げ、加害者と被害者の性別も問わなくする。強制わいせつ罪で処罰される行為のうち、悪質性の高い一部の行為は強姦罪として処罰できるようにもする。

長らく停滞していた日本の性犯罪処罰において重要な改正だ。特に、親告罪である強姦は、被害者に過剰な負担を強い、実際に起訴まで至らない強姦が多いことで知られている。

また、男性の強姦被害者は、ほとんど表に出ていない。

 

この法案は成立の見込みであったものの、本来の「先入れ先出し」の原則に廃して、店晒しにあっている。

 

本来、共謀罪法案よりも先にこの法案について真偽をし、速やかに成立させることが求められているはずだ。

与野党共にに求めながら、疑問点の多い法案を成立させるために、本来重要な法案が後回しになるのでは本末転倒の極みだろう。

 

まとめ

今国会で質問されながら、答えられていない事項はあまりにも多い。これは、今までの政権と比べても異質な数だ。

国会が国会として成立するためには、これらの疑問に対して答え、情報公開を行う他無い。

 

国会とは何なのだろうか?それは議員が質問をし、それに政府が答える場だ。質問に答えない政府は、三権分立を前提とした自由主義国家の政府としては不適切だ。

積み残された問題に対して、政府の誠実な回答を期待したい。