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獣医学部は本当に既得権益なのか?

菅義偉官房長官は27日午前の記者会見で、獣医学部新設が52年間認められなかった経緯について「岩盤規制といわれる獣医師会、農林水産省、文部科学省が大反対してきたからではないか。まさに抵抗勢力だ」と批判した。その上で「規制の根拠が明確にない。そうしたことが維持されてきていることが問題だ」と語った。

既得権とは何か

そもそも、既得権とはなんだろうか。

既得権 ブリタニカ国際大百科事典

すでに獲得している権利。なんらかの法的根拠に基づき、すでに取得している権利。

既得権と権利は何が違うのだろうか。一般的には、上のような辞書的な意味ではなく、

生まれや古い制度などによって不当に守られた権利・権益であり、誰も特をしない権益  

このような意味、あるいは

自由競争を阻む不当な規制により生まれた権益

ではないだろうか。

このツイートもそれを前提にしている。

親の代からの政治家一家である安倍総理が「既得権」を口にするのも不思議な話ではあるが。

 

獣医師は既得権益なのか

自由競争と需給調整

通常の経済活動では、自由競争が担保されていれば、需要に応じて市場が価格と供給量を決定する。

しかし、獣医師はどうだろうか。自由競争によって各大学が獣医学部を作れるとすれば、それは市場により調整されるものだろうか。

「獣医の価格が下がったから」ペットの総数が増えるわけではないし、家畜が増えるわけでもない。獣医の給料が下がったからと言って、それが即座に需要に反映されるわけではない。

完全なる自由競争で成立する世界ではないことが自明である。作れば作った分だけ売れるような種類のものとは違うのだ。

  

大学の目的とはなんだろう。あるいは、大学における受益者とはなんだろうか。(株式会社立大学であれば、それは株主となるが)学校法人は公益法人である。当然、私学助成金によって税金も投入されている。

 

大学の公益とは、社会が必要とし、社会が求める人材を排出すること、またそのような人材に育てることで一人一人の人生にとって必要な教育を提供することだろう。

当然、社会に必要されている、需要のある人材を供給することが公益法人たる大学の義務である。

だからこそ、学部はその需要を正確に見極め、需給ギャップが生じないように人材を輩出することが求められている。

 

獣医を「既得権」と呼ぶ人間が獣医学部を作る愚

獣医であることは既得権なのだろうか。獣医学部は既得権者を育成する学部なのだろうか。

馬鹿げている。獣医学部が獣医を育成する以上、獣医の生活と雇用を守ることは、獣医学部にとって最も重要なタームの一つであるはずだ。

 

そもそも、獣医の資格が既得権であるなら、加計学園の建設はやはり「既得権の仲間入り」を特権的に行ったということになるまいか。

 

既得権とは、ただその地位を保持しているだけで莫大なお金や、様々な特権を手に入れられる立場の人間に対して使うべきことだ。

例えば、そう、父や祖父が政治家であるだけで、後援会や政治資金が手に入ったり、学校法人の経営権を手に入れられたりするような人たちのことである。