「政治」「選挙」を知るための、おすすめ映画
アメリカ映画
スミス都へ行く
古典中の古典であり、「政治の映画って?」と聞かれれば誰もが真っ先にあげるだろう。巨匠・フランク・キャプラの名作。
この作品の何が凄さは、議会のあり方というものを強烈に示している、という点にある。最終盤、不正の汚名を着せられたスミスは、フィリバスター(長い反対討論)で自らの潔白を証明しようとする。
この映画がアメリカ政治にもたらした影響は数知れない。この映画がなければ、信念に従い徹底して討論を続ける、という議事妨害は認められなかっただろう。
ちなみに、アメリカ上院には "silent filibuster"(無言のフィリバスター) というよくわからない概念があり、どうも最近は実際に討論が行われることは減ってしまったようだ。残念である。かつては24時間にも及ぶフィリバスターがあったそうだ。
ともあれ、アメリカ政治史に残る古典である。(パブリックドメインなので、YouTube で探せば全編出てくる、字幕版はないかもしれないが)
フロスト×ニクソン
実在の、ウォーターゲートで失脚したニクソンのインタビュー番組を描いた、ドキュメンタリー映画。
この映画は稀代の政治家であったニクソンという一人の人間の強さと弱さを見せつけられるものである。
ニクソンほど評価の定まらない政治家は居ない。彼はアメリカ史上最悪のスキャンダルの主犯でありながら、同時に経験なクリスチャンでもあり、アメリカ外交のアドバイザーでもあった。そして、この映画でもその評価は見るものに湯だめられている。
ウォーターゲートに関しては多くの映画があるが、本作は、アメリカにおける政治家とはなんであるか、という点を描いた一作であるといえるだろう。
イギリス映画
未来を花束にして
現代は「サフラジェット」。(邦題は酷いと話題になった)。女性参政権を巡った話なのだが、ラストのやるせなさを含め、様々な立場から考えさせられる映画だ。
女性参政権を目指すグループは、途中から暴力的な手段を取り始める。郵便ポストを爆破したり、要人の別荘を爆破したり。劇中でも家族や刑事にその点を非難される。(刑事が実にねちっこい)
人を傷つける手法が許されるべきことか、というのは賛否の別れるところだろう。それが最後に、女性参政権を勝ち取ったのだ…という構成になっている。
ただし、サフラジェットの暴力的な手法が本当に有用だったのかは歴史家の間でも見解が分かれているようだ。
それから100年立たないうちに、イギリスに女性の首相が誕生したことも合わせて考えると、感慨深い。
(この映画はメリル・ストリープは凄いが、あんまり政治は勉強できない気がする)
英国王のスピーチ
英国においては、スピーチというものがとにかく重要だ。 なんせ、シェイクスピアの国である。サッチャーもチャーチルも名演説家として知られたからこそ、長期政権を維持することが出来たのだ。
そういう意味で、第二次世界大戦という未曾有の危機に、吃音症の王が臨む…というのは大変なことである。なんせ、当時の英国は、まさにナチスに敗北する寸前だったのだから。
本作は、イギリスの王室と政治の距離が理解できるとともに、コリン・ファースの素晴らしい演技も相まって一級品のエンターテイメントに仕上がっている。
日本映画
選挙&選挙2
選挙映画、というジャンルは、相当好みが分かれる映画である。しかも、この映画は異様にリアルだ。それは、例えば3秒に1回名前を言う、などのディテールまで含めて全てがカメラの前で伝えられているから。
そして、白眉は1と2、二作で立場が全く変わっていることである。1では、自民党の公認候補として出馬するが、2では完全無所属として出馬している。
とにかく笑える映画なのである。エンターテイメントとしても面白い。しかし、その笑いというものが、実は実際の選挙制度の向いていることがわかると、恐ろしい気持ちにすらなる。
子供を作れと言われたり、奥さんは仕事をやめろと忠告されたり、妻じゃなく家内と言え、と言われたり。こんなので男女共同参画なんて進むはずがない。
そのリアルさこそが恐ろしい映画だ。
立候補
「負けると分かって、なぜ戦う」凄いコピーだ。この映画に関しては、特に解説は必要ないだろう。見る人は見るし、見ない人は一生見ない。マック赤坂の映画なんて見るのは相当の変わり者だろう。
しかし、当たり前だがわざわざ泡沫と言われながら選挙に出続ける男たちには、彼らのストーリーが有る。白眉は、やはりマック赤坂の息子の言葉だろうか。ここでは書かない。ぜひ結末を見届けてほしい。
太陽の蓋
誰が言ったか「ノンフィクション版のシン・ゴジラ」。この映画は完全に「雰囲気」映画だ。作品にはもちろんハッピーエンドはない。
しかし、劇中で言われたように「日本が初めて対峙した怪物」である原子力との未知の戦いに挑んだ政治家たちの姿が切り取られている。
また、同時に日本の原子力に関する危機対策が、いかにお粗末であったかを白日の下に晒し、我々に決断を迫る映画でもある。
合わせて、寺田学氏の日記も読んでいただきたい。