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国家戦略特区での特権的な認可は、自由経済に逆行する縁故主義だ

 駒崎弘樹氏、三浦瑠麗氏が、加計学園に関する所感を発表されている。 

 

本稿はこれに対し、加計学園問題がいかに重要な問題であるかをまとめておきたい。 

 

 

 

加計学園実名文書の真偽

学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設計画に関する複数の記録文書の一つに、実名が記載されている日本獣医師会顧問の北村直人元衆院議員が18日、取材に応じ「(自分が登場する)文書に書かれた内容はほぼ事実だ」と証言した。 

加計学園をめぐっては、証言者、かつ元議員がこのように語る以上、「総理のご意向」と書かれた文章の信ぴょう性は相当に高いものと考える。また、次々にリークされる文章も合わせると、なんらかの総理の意図が反映されていることは疑い難い。

論者の焦点はそれがどの程度問題であるのか、というところに移ってきたのではないか。

個人的に驚きなのは「口利きや忖度はなかった」ではなく「総理の意を汲んだ口利きや忖度があったとしてもそれは問題ではない」という種の主張が、堂々と、見識ある方の口から飛び出ていることである。五年も前なら考えられなかったはずだ。

なぜ獣医学部の認可が問題なのか

まず、この国家戦略特区は、規制緩和・規制改革に真っ向から逆行するものであることを申し上げたい。

なぜなら、この国家戦略特区は

  • 一校のみ
  • 四国(空白地域)に限定して
  • 長くに渡って申請している学校に

与えられた認可であるからだ。これは、実質的には「加計学園ありき」で与えられた特権的な認可である。

かねてより準備を進め具体的提案を行ってきた自治体を中心に、具体的プロジェクトとして、実際の獣医学部の立ち上げを急ぐ必要があり、そのための規制改革、すなわち関係告示の改正を、直ちに行うべきである

という決定がなされ、更にその後京都産業大学が応募してきた時に「獣医学部の空白地域に限る」という点を付け加えたことになっている。

 

これにより、畜産との関わりも深く、ノーベル賞受賞者の教授までいた京都産業大学が、その規制により頭ハネを食らっている。 

 

また、昨日の小池議員の質疑により、原案であれば京都産業大学が参加可能であったところ、あえて条件を絞ることで一本化されたことも示唆されている。

 

www.asahi.com

これは、意図的に京産大をレースから除外した、と言われてもやむを得ないのではないか。

加計問題の本質

実は、この問題の本質は、加計学園が認可されたことではない。京都産業大学(や、その他の希望する大学)が不当な理由で認可されなかった、あるいはスタートラインにすら立てなかったことにあるのだ。

公平なルールに則って市場の判断に任せるのが自由市場の大前提である。加計学園のケースは、もはや市場原理主義にすら値しない。

 日本人のメンタリティーに、国家が社会的な供給量を決めてしまう、社会主義が浸透してしまっているのでしょうか。社会主義はどんなに頑張ってもうまくいきません。

三浦氏は獣医学部新設への規制は不要の規制と述べ、作りたい大学は作ればいい、無用に大学の数や学部数をを規制するのは社会主義的だ、ということを述べられている。

しかし、今回のケースこそまさに「社会主義的」ではないか?とりたてて理由もないのに、特定の大学が申請すらできなくなった様子こそ、役人の胸先三寸で全てが決まった東ドイツやソ連を思い起こさせる。

教育への国費投入の増加は間違いなく、国家による介入と統制を伴うでしょう。

また、私はその論の前提となる「大学教育への公的支出は不要」という論旨にも反対だ。日本がOECD加盟国の中で教育への公的支出が最も低いレベルにあることは周知の事実である。

しかし、日本よりも経済の自由度ランキングで上位に位置するフィンランド・エストニア・デンマークなどは教育への公的支出が多いことで知られている。

経済自由度指数 - Wikipedia

つまり、教育公的支出の拡大は、自由市場経済を脅かしたり、ましてや日本のソ連化を招くものではない。むしろ、教育への公的支出の拡大は日本の国際競争力担保のためには喫緊の課題である。

 

だからこそ、大学認可の公平性は重要な問題である。これが担保されなければ、教育予算に対しても疑問符がつけられかねないからだ。

 

旧共産圏の最大の問題は、デュー・プロセスの機能不全と監視機能の崩壊だった。

計画経済の破綻や大躍進政策の失敗は巧妙に隠され、物資は不足し多数の餓死者が出たが誰も責任を取ることがなかった。それにより経済が大きく停滞したことは論を待たない。公正さは経済の潤滑油だ。

 

縁故主義や利益相反や、その他もろもろの不公正を生む土壌を無くし、腐敗を一掃することこそ、本来の市場の機能を取り戻すのに、必須なのだ。

加計学園をめぐる利益相反

やはり同学園が運営する千葉科学大学では、安倍総理最側近の萩生田光一官房副長官(53)が「小遣い稼ぎ」をしていた。

萩生田氏は、安倍総理の代理として靖国神社に玉串料を納めるなど重用され、総理の政界における「まさに腹心の友」で、先の日米首脳会談にも同行した。そんな萩生田氏だが、

「09年の総選挙で落選して以降、千葉科学大学危機管理学部で客員教授を務めています」(政界関係者)

 そもそも、加計学園の獣医学部新設の前提は、2015年12月、国家戦略特区に今治市が指定されるのが決まったことにあるのだが、

「翌年4月から、文部科学省の役人ふたりが加計学園に天下りしています」と、福島氏は説明する。

「そのひとりの木曽功氏(元文部省高等教育局私学部私学行政課長)は、安倍内閣で内閣官房参与を務めていた安倍総理のお友だちと言えます」

福島議員が語るように、加計学園に関しては、総理側近や行政府の人間による利益相反の疑いもある。

諸外国の常識に鑑みれば、このような状態で、「大した問題ではない」という学者がいる、という方がよほど「ソ連的」ではないか。 

最後に

駒崎氏はこう語っている。

国家戦略特区は、この国に溢れる意味のない規制を改革する、唯一と言って良い武器です。それが、どこが悪いのかいまいち不明瞭な加計学園問題によって抑制されて、改革の武器を失ってしまうのは、国益を失うことと同義です。

規制改革は必要だが、それは公平なデュー・プロセスが担保された上で成り立つべきものだ。

 

特権的な認可は、規制改革ですらなく、掃いて捨てるほどある単なる縁故主義にすぎない。

このような縁故主義に対して立法府が監視機能を果たすことこそ、真に「国益」を失わないために重要ではないだろうか。