【国会書き起こし】安倍総理、憲法改正の質問に回答せず「読売新聞を熟読しては」
安倍総理大臣が、憲法改正についての姿勢について国会で問われ「新聞を熟読してほしい」と答え、議場が一時騒然となった。
2017年5月8日 衆議院予算委員会長妻昭議員の質問(抜粋)
長妻昭 議員
「2020年までに新憲法の施行をめざす」ということですが、真意を伺いたい。
安倍 総理
この場には内閣総理大臣として立っているわけでございまして、予算委員会は政府の予算についての議論をする場です。憲法については、憲法委員会で議論していただきたい。
長妻 議員
なんで国会でおっしゃらないんですか?
安倍 総理大臣
ビデオメッセージは、自由民主党総裁としてお話をさせて頂いたわけです。質問にお答えする義務があるのは、内閣総理大臣としての責任における答弁に限定させていただきたい。
長妻 議員
自民党の憲法審査会の理事である船田さんももっと慎重にしてほしいとおっしゃっている。一切ここでおっしゃらずに、報道や議論ではどんどん発言される、そのやり方には違和感を感じる。締め切りを求めるのもいかがなことか。法制局長官、今の自衛隊は違憲ですか?
横畠 法制局長官
政府として、一貫して憲法に違反するものではないと解してきております。
長妻 議員
総理が一切おっしゃらないので、法制局長官に聞くしか無いんですがね。総理は一項二項は残して、三項に自衛隊を加えるとおっしゃっている。法制局長官に伺いますが、仮に今の憲法に自衛隊を位置づけると、今と全く変わらないということでいいんですね?
横畠 法制局長官
憲法改正をめぐるご議論だと思いますが、憲法改正については、国民、特に国会のご議論を待ちたいと思います。
長妻 議員
判断しようがないですよね、憲法審査会にも何もない。一般論ですが、仮に今の憲法9条の条文に自衛隊を加えると、どうなりますか?
横畠 法制局長官
まさに国会でご議論頂くことだと思っています。
長妻 議員
憲法審査会で議論しろと言っても、憲法審査会の与党の議員が、総理の話をすべて把握しているとも思えない。非常におかしな説明だ。
長妻 議員
総理にもう一回ご質問しますが、自民党憲法草案の、例えば国防軍や、公共の福祉を交易及び公の秩序に変えるとか、九十七条をバッサリ削除するとか、こういった三つの観点については取り下げるという認識でよろしいんでしょうか?
安倍 総理大臣
繰り返しになるんですが、ここに立っているのは内閣総理大臣として立っているわけでございまして、自民党総裁としての考え方は相当詳しく読売新聞に書いてあります。ぜひそれを熟読していただければ良いんだろうと思います。
長妻 議員
新聞読めって、そんな馬鹿な話はないだろう!
(議場騒然)
本日の予算委員会で、安倍総理は5/3に発言した憲法9条1、2項を残す改憲案と、これまでの自民党改憲草案 との整合性について問われ、「読売新聞を読んでくれ」と答弁。思わず椅子からずり落ちそうになるくらい驚きましました。あまりにもご都合主義。委員長も自民党の委員もあきれていました。
— 玉木雄一郎 (@tamakiyuichiro) 2017年5月8日
安倍総理の答弁
予算委員会において、安倍総理は議員の憲法改正についての姿勢を問われ、一民間の新聞社である読売新聞の名前を上げ、「答弁する必要はない」「考え方は新聞に書いてある」と回答した。
これは、議会制民主主義の理屈から言えば、ありえないことだ。理解しがたい答弁だ、と言ってもいい。
予算委員会とは
慣例的に予算委員会は、あらゆる種類の質問を行うことが出来る委員会である。
予算委員会は、所管事項として「予算」とのみ記載されており、そして当然のことながら、政府の行うあらゆる行動は予算が関わってくる。
予算を執行する大臣に不適切な人間が登用されている可能性がある。当然、資質を問うことも予算委員会の所管事項である。
憲法自体も、例えば実際に国民投票を行えば予算が関わる。これも、予算委員会の所管事項になる。
このように、予算委員会で幅広な質問をすることは、慣例的に言っても、また衆院の規則から言っても全くおかしいものではない。
新聞のインタビューは国会答弁と同値ではない
国会とは、答弁を通じて政府の監視を行う場所である。当然、民間のメディアにおけるインタビューとは全く性格の違うものだ。
読売新聞がどれほど清廉潔白な新聞社であるとしても、特定の新聞社がインタビューに応じた無いようというのは、あくまで経済活動の中で行われている。
また、当然のことながら、民間の新聞社が行う以上、そこにはバイアスや脚色が存在する。
総理大臣が特定の新聞社だけのインタビューに答え、何を聞かれても「それは新聞社に話したからここで話す必要はない」などということを言うのであれば、日本は議会制民主主義の大前提を失うことになる。
答弁に関して答えず、紙面にすべてを語るなら、もはや一日に億単位の経費をかけて国会を開催する必要など、ないではないか。
総理が認めたお気に入りの新聞社だけに、今年の政策はどうする、などと述べておき、質問は聞かず、紙面を読め、と言っておけばいい。
民主主義の基本は、情報の透明性と議会へのリスペクト、そして憲法の遵守である。残念なことに、今の政府にその三つの要素は、全て欠けているようにみえる。