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「縦割り110番」の何が問題なのか

河野太郎行政改革担当大臣による「縦割り110番」に対して、4000通の悩み事が寄せられたと、大臣が記者会見で発表した。

自らのHPに「行政改革目安箱」を開いたが、4千件を超える情報や意見が殺到して停止していた。自らがすべてに目を通す方針も見直す。 

「縦割り110番」とは、河野太郎氏が個人サイトに設置した投稿フォームだ。当初、すべての投稿を河野大臣が読むとしていたものの、投稿が殺到したため内閣府に開設することとなった、という。

目安箱をつくった17日段階では、届いたものを「全部読む」と明言していた。ただ、想定を大きく上回り、翌日には停止。25日の会見では「物理的に続けていくのは正直厳しい状況」としたうえで、今後は「役所のプロセスにまず乗せ、必要なものには目を通していきたい」と軌道修正した。

 

「公」と「私」の違い

もちろん、行政の長たる大臣が直接いろいろな意見を受けるのは良いことである。

しかし、問題はこの縦割り110番の投稿フォームが河野太郎氏個人のWebサイト上に設置されていたことだ。

 

かつて、金子恵美参院議員が公務以外で公用車を利用していたことが発覚し、問題になったことがあった。

 

あるいは、舛添要一都知事の公用車利用は、直接的に都知事交代の引き金となっていた。

 公用車利用の是非についてはここでは明言を避けるが、「議員」という立法府の役割と「大臣・副大臣・政務官」という行政府の役割、あるいは私人としての立場は分けなくてはいけないということは明らかだろう。

 

例えば、ドナルド・トランプ氏個人のTwitterアカウントと、アメリカ大統領のアカウントも分けられているように、公と私を分けることは一般的に日本に限らず、重要なことだ。

 

 

ヒラリー・クリントン氏は、公務で個人のGmailを利用したことを批判されている。

 

個人情報はどうなっているのか

私がフォームを見た時点では、そもそもプライバシーポリシーなど、送信した情報がどのように使われるかは明示されていなかった。

縦割り110番に対してメッセージを送った方は、「大臣として」の河野太郎氏にメッセージを送ったわけだろうと思うが、政治家個人のメールというものは、個人だけが見るということはありえない。秘書や事務所の関係者などは必ず閲覧することになる。

もちろん、例えば特定のメールアドレスにフォームの内容を送信し、第三者が絶対に見られないという前提であれば、一定の秘匿性は担保されるかもしれないが、明示されていない以上、その解釈を取ることは無理があるだろう。

 

しかも、例えば大臣が読んだあとにそのメールがどうなっているのか、適切に破棄されたのかなどの情報は一切ない。

極論すればフォームを送信した人に対して、「ご意見をお寄せいただきありがとうございました。なおこのあとの進捗はメールマガジンにご登録ください」など、フォローアップと宣伝のメールを送ることも不可能ではない。

 

以上のことを考えれば、河野太郎氏個人のWebサイトに行政改革担当大臣としてのフォームを載せるのは到底ありえない話で、そもそも内閣府に設置することがすぐできるのであればそっちでやればいい。

極論すれば大臣としての地位を利用して、Webサイトのアクセスと、メールアドレスのリストを入手したという解釈もできなくもない訳で、問題が大きい。

 

まさに字義通りの「公私混同」と言えるのではないか。