民進党はなぜ選挙で勝てないのか?
民進党が弱い理由
1. 政治資金がない
野党はお金がない。それでも、企業献金を受け取らない議員が多い。更に、今回企業団体献金の禁止を法案提出してしまったほどだ。
政党交付金も、自民党に比べて圧倒的に少ない。二倍以上だ。
実際、一軒一軒戸別訪問で個人献金を貰いに行く議員の先生も多い。その分、マーケティングなんかも微妙にクオリティが低い。
支部長に配れる金も少ない。優秀な人材が何年も地元を回って地盤を固めることができない。
小沢一郎にせよ、田中角栄にせよ、あれほど権勢を振るったのは、何と言ってもカネ集めがうまかったからだ。金は票になるが票は金にはならない。
2. 運動員と地方議員がいない
自民党には膨大な地方議員と農協、特定郵便局長会、日本医師会など、長くに渡って利益構造を維持しているネットワークがある。
自民党は、なんと全地方議員の五〇%を占めている圧倒的な支配政党だ。
総務省|地方公共団体の議会の議員及び長の所属党派別人員調等(平成28年12月31日現在)
公明にはもちろん最強の集票マシーンがいる。
民進党には地方議会では第二政党ですら無いことが多い。とすると、必然的に頼れるのは連合しかない。連合は、ポスティング貼りなど実際の民進党議員の選挙運動を支えているが、それだけでは圧倒的に弱い。
更に、都市部となれば更に労組の影響力は弱くなるため、地域差が大きすぎる。
3. 世襲議員が少ない
民主党/民進党の歴史は20年くらいである。地元に入り込める利権ネットワークがない。所詮政治は「おつきあい」である。
小選挙区で安定して勝てるのはやはり世襲議員である。彼らは、若いうちから政界で勝ち続けることで、大臣に上る可能性も高くなる。
民進党には世襲議員が少ない。しかし、世襲というのは「強くてニューゲーム」のようなものだ。
- 選挙に最初から強い
- 若い時から政治家になれる
- 若いので抜擢されやすい
- 当選回数が増えるので入閣しやすい
- といいこと尽くめだ。閣僚のほとんどは世襲であるのがその理由だ。
民主党が政権に付けた理由
ではなぜ民主党は政権につけたのか?理由はいくつかある。
1. 小沢一郎
かつての小沢一郎は、間違いなく政界の中心であった。たった一人で自由党が数十議席取れるほどだ。
そして、小沢一郎は協力な利権構造を理解し、農家へのドサ回りなど、自民党的な政治を徹底して行った。
それを、ニューリーダーともてはやされた鳩山由紀夫、そして厚生大臣として絶大な人気を誇った菅直人が任期面で支えていたのが民主党の実体だった。
2. 美味しい政策
民主党マニフェストはほとんど詐欺に近いものだった。しかしそれでも、高速道路無償化や、ガソリン値下げなど「おいしい」政策をどんどん打ち出した。これに国民は飛びついた。
農家への戸別所得補償制度は、バラマキの極みのような政策だったが、これは選挙対策としてはやはり100点満点だった。
3. 小泉純一郎の人気があまりに高かった
安倍晋三、福田康夫、麻生太郎の一挙手一投足は小泉純一郎と比べられ、相対的に人気は落ちていった。
これは、民主党政権にも言えることだ。民主党政権は小泉構造改革の幻影に常に苦しめられた。と、同時に小沢民主党の幻影にも苦しめられた。
安倍晋三の次の総理大臣は大変である。安倍はそれを分かっているから任期を延長した。
総論 : なぜ民進党は弱いのか
民進党がなぜ弱いのか、という問いは「貧乏人の息子はなぜ貧乏なのか」という問いに似ている。
民進党に弱いのは地盤がないからであり、地盤が無いのは弱いからだ。
民進党は日本の政治の負の歴史を背負っている。民進党に地盤がないのは、自民党の議員が戦後ずっと勝ってきたからである。
自民は選挙に大敗しても組織はしっかり残ったが、民主党は一度の大敗で完全に組織がなくなってしまった。そもそもの組織的強度がないからだ。
民主党政権がひどかった、というのはある部分では正しいが、それはどちらかといえば小泉以降、あるいはリーマン以降とくくられるべき政治的空白であるように思う。(リーマン後の麻生政権は恐ろしいほど無力であった)
森喜朗がどんなに酷くても自民党はそのあと選挙に勝っているわけだから、前政権のことを言うのはあまりフェアな議論ではないように思う。
総論 : では民進党はどうすべきか
日本の未来は暗い。高齢化は誰にも止められず潜在成長率は低い。日本が成長する見込みはない。
自民党政権だろうが民進党政権だろうが共産党政権だろうが、これを解決する魔法の手段はない。
とすると、夢を見せるには先送りするしかない。減税と給付である。旧民主党は財源の裏付けがないと言われながら減税と給付を主張し続けて選挙に勝った。
かつて民主党が勝った時の方法を模倣するのである。
思えば、かつて民主党には長尾敬や山谷えり子や西村眞悟がいた。彼らは自民党以上に右と言われていた。そういうごちゃまぜ集団が「自分たちの手で政権交代を起こす」という漠とした機体で寄り集まったのが民主党だったのだ。その期待が萎めばみんな離れていくのは当然だ。
民進党は、どんなに利権まみれであろうが、利権が一党に凝り固まっているよりは二つの党に分散されている方がいい、と割り切るべきではないだろうか。
そして、次に政権を取った暁には、利権構造を変え、自らの側に利権を引き寄せる現実的な努力をすべきだろう。
もちろんこれは偽悪的な言い方である。しかし、このような現実的なアプローチを経ない限り、真の理想的な政党政治に近づくことすら叶わない、というのが現実ではないだろうか。
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