加計孝太郎氏と安倍総理 ー その友人関係は本物か?
予算委員会における、首相や与党の言い分を改めて見てみよう。
- 柳瀬氏と加計学園の出会いは、安倍総理主催のバーベキューだった。
- 柳瀬氏は加計学園の関係者と複数回、時に長時間に渡って面談していた。
- 安倍総理は、加計学園が国家戦略特区に申請していたことは、全てが決定するまで知らなかった。
加計氏と安倍総理は、本当に友人関係にあるのか
安倍総理の言っていることを真実とするなら、自分が全く知らない間に、友人が勝手に自分の秘書官と話し、秘書官からアドバイスを受け、自分のビジネスに利用し、それに対して一言も相談がなかった、ということになる。
上記は安倍総理の言い分そのものである。
ここで、安倍総理が真実を述べているとすれば、この状況について、唯一説明が出来る仮説を提示しよう。
そもそも、加計孝太郎は総理を友人だと思っていなかったのではないか。そして、相談することは、むしろマイナスになると考えていた。
友人ならば相談の一つもしているだろう。プライベートだから迷惑をかけたくない、というならそもそも総理秘書官と会おうとしないはずだ。
加計氏が必要としていたのは人間・安倍晋三との友情ではなく、総理大臣という地位を持った人間との深いコネクションだけだったのではないか。
安倍総理が真実を語っているとした時の仮説
加計孝太郎氏は、総理との個人的関係を誇示して、バーベキューで知り合った、柳瀬首相秘書官とのアポを(安倍総理に報告することなく)取り付けた。
その際(どうやったのかはよくわからないが)とにかく総理にこの件を報告しないように言い聞かせた。
「本件は問題になるかもしれないから、決して安倍総理に報告しないように、俺から言っておくから」などとと言い含めた。そうでなければ、柳瀬氏が総理に報告しない理由は想像できない。
もしこの仮説をとるならば、つまるところ、友人だと思っていたのは安倍総理の側だけであり、加計孝太郎氏は安倍総理を単なる利用できる駒だとしか思っていなかった、ということになる。
なんという悲しい話だろうか。まるで「マッチスティック・メン」の世界である。
私がもし、自分が学生時代からの友人だと思っていた人間が勝手に秘書と会って、しかも信頼していた秘書が勝手に「総理案件だ」などと言っていたら、裏切られたと思って気が狂わんばかりになるだろう。
安倍総理の叫び
安倍総理は度々国会で「彼は私との関係を利用して、何かを成し遂げようとしたことは一度もない」と言っていた。
私はこの言葉に強い違和感を覚えた。なぜなら、友人関係というのは通常そういうものであり、そんな言葉は「彼は私を利用しているのでは」と疑っていない限り出てこないからだ。
「何かを成し遂げようとする」かどうかは、便宜を図る側にはわからない。言うべきなのは「私は彼に何か便宜を図ろうとしたことはない」という言葉ではないだろうか。
この仮説が真実であるとすれば、総理の「彼は私との関係を利用して、何かを成し遂げようとしたことは一度もない」という言葉は、荒涼とした総理の精神風景から来た叫びなのではないだろうか。
安倍総理のセキュリティホール
いずれにせよ、上記はただの仮説である。
しかし、安倍総理がこの件を相談されていようがなかろうが、加計氏が総理との個人的関係を使って岡山理科大学獣医学部の建設をもくろんでいたことは確かだろう。
籠池氏は安倍昭恵夫人というセキュリティホールを利用して学校建設を成し遂げようとしたが、加計氏が利用したのは、総理の心のセキュリティホールだったのではないか。
自分の周りにいる人間は、結局のところ利害関係でしかつながっていなかった……そんな絶望を食い止めようとした叫びが、安倍総理の国会答弁だとしたら、私はそれに対して、深い悲しみを感じざるをえない。
総理大臣が、自ら主体的に加計氏に便宜を図っていたとすれば、上記のような悲しい想像はしなくてすむ。
私としてはそのほうがよほど、気分が楽なのだが。