金田勝年法務大臣の迷答弁から考える、共謀罪の本質的な危険性
金田勝年法務大臣の答弁は国会でも二転三転し、多数の迷言が出ている。答弁を振り返るとともに、共謀罪審議の問題点を考える。
金田大臣答弁一覧
成案を得た段階で…(一〇回目)
「私の頭脳の問題」答弁
衆院予算委。民進、階の質問に「私の頭脳の問題で対応出来ない」と答弁しちゃう金田法相。
— 🏕インドア派キャンパー (@I_hate_camp) 2017年2月8日
もうこんな法務大臣イヤだー(><) pic.twitter.com/G80FXfGHDF
キノコを採って暮らす犯罪テロ集団とは
迷答弁。キノコ狩りをしたらテロリストなのか?(海産物なら問題がないようだ)
一般人は捜査の対象にならない
「一般人は捜査の対象にならない」答弁。法務副大臣はこれに対し「嫌疑がかかった時点で一般人ではない」という論理構成で法務大臣を擁護せざるをえなくなった。
花見と下見答弁
【共謀罪】これだ!珍答弁
— ぬかぼこ (@nukaboko) 2017年4月28日
金田大臣:
花見ならビールや弁当もってるが
(犯罪の)下見なら地図や双眼鏡
メモ帳という外形的な事情が…
藤野議員:
そんなことで判断されたら大変だ
4/28 衆議院 法務委員会 pic.twitter.com/sl26jRJ9Jp
日本の司法にある問題点とは
ここまで金田大臣の答弁内容を振り返って来たが、これは金田法務大臣を直接糾弾する意図で行ったものではない。
金田勝年氏は元大蔵官僚であり、一橋大学を出たエリートである。彼は決して頭の悪い人間ではないはずだ。
問題は、このような答弁をせざるを得なくなるほど、政府の立法がずさんである、という点にあるのではないか。
どのような人間を逮捕し、捜査するのか、共謀罪法案に関してはほとんど線引きがされておらず、共謀罪の立法が「可能な限り誰に対しても適用できるように」構成要件を定義されているように見える。
だからこそ、穴が全く埋まらないまま、大臣が迷答弁を繰り返さざるを得なくなっている。
通信傍受法の適用拡大
一つ触れておきたいのは、昨年成立した改正・通信傍受法である。
これは、厳格に適用されていた通信傍受を、第三者の立会いなしに可能にするものだ。
共謀罪という計画段階での逮捕となれば、当然通信傍受が必須になるわけで、この改正と、共謀罪法案の成立はセットであると考えるべきだろう。
妙なのは、通信傍受法で定義されている犯罪要件よりも、遥かに共謀罪のほうが要件が広いことである。盗聴せずに一体どうやって共謀を察知するのか。
通信傍受による捜査が許容される犯罪
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薬物
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銃器
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集団密航
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組織的殺人
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殺人
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傷害
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放火
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誘拐
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逮捕監禁
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詐欺
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窃盗
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児童ポルノ
共謀罪での対象犯罪
- 277の犯罪(森林法違反や著作権法違反、種苗法違反などを含む)
強硬に反対される取り調べ可視化
また、通信傍受法の改正と抱き合わせで一部導入された取り調べ可視化だが、何故か警察は全面的な可視化は強硬に拒んでおり、一部警察の指定したタイミングのみの可視化、という形でしか導入されていない。
警察は未だに密室で取り調べを行っており、不当な取り調べが問題になったケースは数多い。
近年もある不当な取り調べ
「答えろ、答えろ、答えろ」
「これは命令やで」
「80まで生きてそれか。くだらんな、不毛や」
「人間やっぱり年っていうたら、プライドだけが残るな」
刑事のこんな言葉が延々と続く取り調べ。
死刑冤罪という最悪の結果を産んだ袴田事件
また、死刑判決が出た後冤罪がわかった「袴田事件」でも、違法というほかない取り調べが横行していた。
被疑者の人生を左右する取り調べが決して適法に行われていないのは由々しき問題であり、真犯人を逃すリスクも高い。
代用監獄問題と高い有罪率
更に、日本については、高い有罪率も懸念されている。
実体裁判件数58353件,無罪判決122件。 これを元に計算すると真の有罪率は,「99.79%」となります。
日本の警察が神がかり的な捜査能力と絶対に冤罪を生み出さない判断力を持っているのか、無罪の人間を有罪にしているのか。
死刑事件ですら冤罪が出ていることを考えれば、後者と考える他ないだろう。
ここで詳しく述べないが、いわゆる代用監獄問題も決して見逃せる問題ではない。
共謀罪問題の本質とは
日本の司法には様々な問題があるが、それは警察の権限が小さいことによって発生しているわけではない。むしろ、権限が過剰に大きく、被疑者や受刑者の権利が勘案されていない事によって起きている。
その中で、共謀罪法案は、テロ対策のために厳密に運用される法案ではなく「怪しいやつは犯罪者だ」というレベルで警察が捜査・検挙できるようにするための法案ではないか?と懸念されている。
厳密に運用する気持ちがないからこそ、大臣答弁も空虚になっているのではないか。
少なくとも、国民の懸念が払拭されたとは言い難い答弁だろう。
異常に高い有罪率、不当な取り調べ、代用監獄など、近代の人権に照らして未熟な日本の司法や警察組織が、フリーハンドに近い捜査権限を手にするのだ。
これは、かなり恐ろしいことではないだろうか。