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立法府を殺したい人たち

立法府への弔事

佐々木さやか議員の金田法務大臣への問責決議案の否定は、立法府への弔事としては、なかなか気の利いたものだった。「皮肉でないとしたら馬鹿」というのは田原総一朗氏の言だが、弁護士でもある佐々木議員は馬鹿ではないだろう。

司法試験まで受かって議員になってあんな大臣を褒めちぎらなくてはいけないのだから、哀れでしかない。

勝ち誇る恥知らず

 一部の議員は、勝ち誇っている。

一体、彼らは何に勝利したのだろう?

多くの方が審議は不十分だと感じている。だから、安保法制のときには、まだしも「更に理解を得ていく」という愁傷な心がけを示していた議員が多かったはずだ。

それが、国民的な合意を得た上で法案を成立させる、という議会の建前でありプロトコルであったはずだ。

 

勝ち誇る彼らの頭に共謀罪審議を巡って丁寧に国民の理解を得ようという気持ちは全くない。あるのは、野党が嫌がることは楽しいという、ただそういう心性だけだ。

 

品性の劣化

委員会採決した上で本会議で採決を行う、というのもまた、日本の議会のプロトコルであった。安倍政権はあらゆるプロトコルを真っ向から無視したのだ。

 

「例え、今理解を得られていない法律でも、必ず将来理解されるに違いない」という思いが彼らにはない。なぜか?元々共謀罪が不要だと思っているからだ。 

だから、鼻から説明したり理解を得る気などさらさら無い。 

 

この共謀罪法案の審議は、議論ですら無い。あえて言うなら、「儀式」だろうか。

 

金田法務大臣には答弁能力がなく、まともに答えることも出来ていない。

共謀罪法案に関して、まともに答弁されていない。

そして、前川文書をめぐる官邸の嘘も既に明らかになった。

 

そんなことは誰もが解っているが、与党や維新の一部(あるいは多く)の方々は、それを恥だとすら思っていない。それこそが彼らの望みなのだ。

彼ら彼女らは、あれほど無能でどうしようもない大臣すらやめさせることの出来ない、立法府と野党の無力を笑っているのだ。

安倍政権と恥

分かり易く言おう。安倍総理と、恥を失った一部議員たちは、既に立法府を面倒で仕方ない役所のハンコくらいにしか考えていない。

国会で何かを説明したり、国民的な合意を作り出したり、法案を妥協し世論に配慮する、ということは、彼らの頭の中には片隅にもない。

 

安倍総理と取り巻き議員は、金田法務大臣が酷い答弁をしていることは、百も承知なのだ。その上で「あんな酷い大臣すらやめさせられないんだね、野党は」という倒錯した快楽に浸っている。

そうでなければ、安倍総理や、金田法務大臣や、義家文化副大臣の答弁に恥を感じず生きていくことは出来ないだろう。

そう、この国会は恥の国会であった。しかし、嘘をつくのに恥を感じなくなれば、人はいくらでも嘘をつけてしまう。

 

彼らにとって国会は不要なのだ。罪刑法定主義も不要なのだ。逮捕状も不要なのだ。真実すらも、不要なのだ。

ただひたすら虚構の業績だけを述べるメディアと、行政機関があればいい。

共謀罪への懸念 

共謀罪審議を通して、私は共謀罪に対する懸念が更に高まったと考えている。

国会のデュープロセスすら無視する今の日本で、刑法や捜査手法を抑制的に運用できるはずがない。

 


共謀罪をめぐる全てのプロセスで最もおぞましかった発言は、土屋正忠議員の「テロ等行為だ」発言と、

 本会議で、自身の質問中に問責決議案を提出した民進党議員に対して「質問権を奪う行為は、テロのような不意打ちであり、これこそ処罰されるべき」と言った東徹議員の討論である。

 

これは冗談ではありえない。法案を提出し、賛同し、本会議で答弁する議員が「テロとして処罰されるべき」というのは冗談ではありえないのだ。

いや、もしかすると、彼らは気の利いたジョークを言ったつもりなのかもしれない。そう、彼らにとって「テロ」というのは、冗談の延長でしか無い。その冗談の延長で、我々が時に逮捕される。そういう世界に我々は迷い込んでしまったのだ。

 

だとすれば、やはり公明党は正しいのだろう。あれは立法府に対する弔事なのだ。体制側にいない限り逮捕され、潰されることを最もよく知っているのは、戦前弾圧されていた彼らだからだ。

 

この法案を簡潔にまとめることで、私も佐々木議員に習おうと思う。

国民の安全を守り国際社会と連携してテロに対応するための、テロ等準備罪は、金田法務大臣誠実かつ真摯な答弁により、充実した質疑を行いましたが、野党のパフォーマンスによってこれ以上議論が深まらないと判断し、野党の一部も含めた賛成多数により可決成立しました。 

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

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